怪談実話集

作者:志村有弘河出文庫
明治・大正時代に語られた怪談を集め、昭和初期に発行された『怪談実話揃』の現代語訳。
200ページほどの文庫本だが、50篇近い怪談が収められている。
全編に漂っているのは、宵から夜にかけての妖しげな雰囲気だ。
文明開化の後、迷信を排除し、合理的な考え方に移ろうとしていた時代。
狐狸の類のいたずらを笑いながらも、闇を恐れていたことがよくわかる。
冒頭の「お絹の話」は捨てられた女が男に祟る古典的な怪談だが、新鮮な感じがした。
次の「血の窓」は勘違いでも、嫉妬で男を殺す生霊の話だ。
祟られている家を善意で救った男が、その後悪霊に憑りつかれて死んでしまう「死んだ僧」は非常に面白い。
前半は面白い話が多かったが、「斑猫の怪」以降の後半はクオリティが格段に落ち、ダレてしまうのが残念。
内容が薄いのに、値段が高い河出文庫にも不満を感じる。
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