駿河城御前試合

作者:南條範夫|徳間文庫
人気漫画「シグルイ」の原作を、神田の「時代屋」で見つけたので、購入した。
南條の代表作は読んでいるつもりだったが、これは未読だった。
大納言忠長支配下駿府城で、11組の侍が真剣勝負で闘う話で、それぞれの果し合いが順番に収録されている。
シグルイ」のベースになっているのは冒頭の「無明逆流れ」で、わずか30ページほどの短編だ。
漫画の異様な迫力からすると、拍子抜けするくらい、あっけない内容だった。
これを「シグルイ」に発展させた山口貴由は、もはやオリジナルだと考えたほうがいい。
つまり、「シグルイ」からこの小説に入るとがっかりするということだ。
シグルイ」で見物人として登場する屈木頑之助が「がま剣士」の主役として登場するが、話としては面白くない。
マゾ剣士が登場する「被虐の太刀」や、槍と剣の戦いの「疾風陣幕突き」はまあまあ面白いが、他の話はイマイチ。
そんな中で、コミカルな「身替り試合」と、長編の「無惨ト伝流」は南條作品らしくて、面白かった。
運命のいたずらに翻弄され、ライバルの陥穽に落とされる真面目な剣士の過酷な運命こそ、南條作品だ。
シグルイ」が売れているうちに、戦国時代の残酷モノが再販されれば、もっと評価されるだろうな。

駿河城御前試合 (徳間文庫)

駿河城御前試合 (徳間文庫)