最後の記憶

作者:綾辻行人|角川文庫
若年性アルツハイマーに倒れた母の、幼少時代の記憶の謎を追うミステリー。
大学院生の森吾は、50歳で記憶が失われていく母の千鶴を恐れながら看病していた。
これは遺伝するの病ではないのだろうか?森吾は将来に悲観し、徐々に自分を失っていく。
最近の記憶をすっかり失ってしまった千鶴だが、子供のころに経験したショックだけは忘れていなかった。
血のような夕日と上弦の月ショウリョウバッタの羽の音と、血まみれで逃げ惑う子供達。
これらが本当の記憶なのか、森吾は幼馴染の唯と共に母の過去を調べることにした。
母の故郷に行くが、親族の口は重く、やはり過去に何か経験したのだと森吾は確信する。
同時に森吾の神経も不安定になり、夢と現実の間を行き来するようになる。


読んでいる間は面白かったが、結末にパラドックスを利用するのはアンフェアな感じがした。
相変わらず、行間に雰囲気を盛り上げるための訳のわからないフレーズを入れているが、これが苛々させられる。
この作家は、自分にとって面白く感じるのは5冊に1冊くらいなので、あまり腹も立たなかった。
それでもつい読んでしまうのは、登場人物を取り巻く舞台装置(記憶喪失の恐れと母の出生の謎)を作るのが上手いからだろうな。

最後の記憶

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