大名廃絶録

作者:南條範夫|文春文庫
漫画「シグルイ」でまた光が当たった感のある作家の再販本。
直木賞を受賞した「燈台鬼」を始め、残酷な歴史物語は今でも十分ウケると思う。
「廃城奇譚」や「第三の影武者」「古城物語」とか「残虐の系譜」など、復活してもらいたいものだ。
目を潰し、指を切り落とし、歯を叩き折る拷問の応酬や、名君を陥れる老臣の陰険な陰謀。
凄惨な描写と、登場人物の救いようのない末路。初めて読む人はショックを受けると思うが、はまる人ははまる。
剣士を扱ったものより、戦国時代の地方の小大名を題材にしたモノがオススメ。
この「大名廃絶録」は残酷モノを求めると、刺激は全く無い。
でも、江戸時代の廃絶になった12名の大名をエピソードと自論を交え、コンパクトに描いている。
外様大名の加藤、生駒、福島家の油断を見逃さない幕府は、身内にも過酷だ。
堀田正信の狂人ぶりは面白いし、取り潰された大名本人は暗愚のためだと明快に結論付けている。
ただ、南條範夫の面白さを味わうためには、やはり戦国時代の残酷モノだ。
「燈台鬼」は遣唐使を扱った作品だが、帰りの船の描写はショックがあり、良い。

新装版 大名廃絶録 (文春文庫)

新装版 大名廃絶録 (文春文庫)