怪異実聞録 なまなりさん

作者:中山市朗|メディアファクトリー
新耳袋のコンビの片割れの作品。意外なことだが、ひとつの話で完結している。
沖縄の対魔師の礼二が2日間にわたって筆者に語った話は、とてつもない怖さのある、非常に良くできた怪談だった。
仕事仲間の健治が沙代子と婚約し、祝福ムードに包まれている中、鈴江と香奈江という双子の姉妹が現れる。
双子は健治と結婚する沙代子を執拗に苛め、ついに沙代子は石垣島で、無残な姿で自殺を遂げる。
沙代子の自宅からは双子を呪う遺書が見つかった。その後、双子の周りには不思議な事件が起きる。
精神的に追い詰められた双子は、新潟の実家に引きこもるが、そこでも得体の知れない現象が発生する。
双子の父親から除霊を依頼された礼二は気が乗らないまま、新潟の双子の家に滞在することにした。
新潟の家で起きる怪異と、双子の親の忌まわしい出自、修まらない呪いが淡々と語られる。
静めようとした礼二も標的となり、彼は財産と家族を失ってしまう。
「呪いや祟りは存在するのだろうか」とオビには書かれているが、これを読むと存在するのかなと思ってしまう。
ネットで語られ、増幅し、さらに伝説になりそうな怪談だ。ちなみに「なまなりさん」とは生霊のこと。

なまなりさん (幽BOOKS)

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