6時間後に君は死ぬ

作者:高野和明講談社
渋谷で待ち合わせの場所に急ぐ美緒は、大学生風の男から「6時間後に君は死ぬ」と声をかけられる。
誰かに刺し殺されるという。取り合わなかった美緒だが、待ち合わせをすっぽかされることまで予言され、それが的中したので、男を信用するようになる。
男は山葉圭史といい、大学で心理学を専攻しており、過去に二人の女性の死を的中させたという。
美緒はストーカーの男に付きまとわれており、その男が自分を殺すのではと考える。
二人でストーカーを探すことにするが、警察では連続女性殺人事件の背後に予言をする男性がいることをつかんでいた。
圭史は美緒の味方なのか?6時間後に美緒を殺すのは誰なのか?
この話は短編集の形をとっているが、最終話でまた美緒と圭史の話に戻る。
「時の魔法使い」は金銭的苦労に向かいながら、脚本家を目指す女性が、20年前の自分と出会う話。
「恋をしてはいけない日」は交通事故を目撃した女性が、介抱してくれた男性に恋に落ちる話。
ドールハウスのダンサー」はダンサーを夢見る女性の挫折と、その生き様をドールハウスに残した女性の話。
この3つの話は展開が意外で、非常に面白い。間違った生きかただけはしないと決意する女性には共感を覚える。
いずれの話も圭史が少しだけ登場する。
最終話の「3時間後に僕は死ぬ」は再び、圭史と美緒の話となる。
最初の話から5年後、美緒は結婚式場で働いていたが、ある披露宴の来賓で訪れた圭史と再開する。
美緒の顔を見た途端、圭史は「3時間後に自分は炎に包まれて死ぬ」という。
披露宴の客もほとんどが焼死するらしい。ここで何が起きるのか二人は探し始める。
この作家はカウントダウンに向かう緊迫感を伝えるのが上手く、本作では女性の強さを魅力的に描いている。
あまり多くの作品を書いているわけではないが、ハズレの無い作家だと思う。

6時間後に君は死ぬ

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