水の迷宮

作者：石持浅海｜光文社文庫
冒頭、夜の水族館で職員が水槽の前で突然死する。
3年後、彼を悼むために訪れた深澤だったが、水族館には脅迫メールが届く。
水族館の職員である友人の古賀とともに、展示場を見回ると、生物を攻撃する仕掛けが見つかった。
その後も脅迫メールが届き、その都度、展示場で仕掛けが見つかる。
職員達は、警察に通報するように館長するが、受け入れられなかった。
その直後、飼育係の職員が水槽の前で死亡しているのが見つかった。
深澤は探偵役となり、水族館で働く人たちの行動を調査し、犯人を指摘する。
閉鎖された空間での会話劇のミステリーだが、緻密に練り上げられている。
フェアな手法で犯罪を暴く手法は納得させられるが、少し息が詰まる。
だが、その後の犯人の取り扱いにはもっと驚かされた。
正統派のミステリーだが、水族館の未来を描いたファンタジーでもある。
「深澤よ。地球を造ってみないか？」という言葉が印象的だ。
「アイルランドの薔薇」「月の扉」も不思議な魅力があった。
この作品は謎解きとしては、理詰め過ぎるが、登場人物の描写が良いと思う。

水の迷宮 (光文社文庫)