シャトゥーン

作者:増田俊成|宝島社
2007年「このミステリーがすごい」大賞優秀賞受賞作。巨大なヒグマと闘うパニック小説。
年末の雪の中、テレビ局の記者の土佐薫は、娘と新聞記者の瀬戸とともに、車で兄の元に向かっていた。
兄の昭は野生動物の専門家で、北海道北部の原生林を管理しており、共に大自然の中で新年を迎える予定だった。
道中、交通事故を起こし、クマに襲われた猟師の死体を発見するが、薫たちは兄の研究所にたどり着く。
兄の研究所には、助手の男女2名と、密猟者の男性がいた。猟師の死体は彼の相棒だった。
人間を食べたヒグマは、ヒトに味を占め、別の人間を襲うようになる。
その夜から、3メートル近いヒグマが薫たちに攻撃を仕掛けてきた。
最初の被害者は昭の助手のフィンランド人の男性で、腕や手を噛み千切られ、生きたまま顔を喰われて死亡する。
350キロを超える巨体の前に、研究所は破壊され、1人ずつ被害者が増えていく。
非常に面白い設定なのだが、人間の描写が稚拙なので、そこがかなりのマイナスになった。
ヒグマに生きたまま食べられる人たちの台詞も「痛い」だけでは、ちょっと白けてしまう。
良い感じなのに何かが足りない。「このミス」はこの手のものが多いと思う。
吉村昭の「熊嵐」には及ばないが、ヒグマの残酷な習性と、過去の事件の記述は勉強になった。
ちなみに吉村氏が描いた事件はWikipediaでも取り上げられている。⇒ 三毛別羆事件
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