サイレント・ボーダー

作者:永瀬隼介|文藝春秋
敏腕ルポライターの仙元と渋谷で自警団「シティ・ガード」を率いる18歳の三枝。
二人には幼い頃のトラウマが、その後の生き方に暗い影響を及ぼしていた。
仙元は離婚した妻から、家庭内暴力を振るう中学生の息子を引き取ることにした。
息子に殺されそうになりながら、更正させようとするが、仕事は減っていった。
代わりに仙元の下働きをしていた南田が看板ライターとしてのし上がってくる。
スクープを求める南田は渋谷の自警団のリーダー三枝に接近する。
正義感あふれる三枝はメディアに露出するとすぐに人気者になる。
だが、自警団のナンバーツーのキムは三枝の死を恐れない行動に不審感を持っていた。
あまりの人気に自警団の活動を休止した三枝は、やがて殺人に手を染めるようになった。
親子関係が修復しつつあった仙元だが、三枝のグループに息子を殺され、復讐を誓う。
先天的に痛みを感じない三枝と、記事を書くために恐ろしい執念を燃やす仙元。
二人が交差するところがあまりにも唐突で、別々の話にした方が面白かったのではと思った。
殺した人間の頭部を並べて、人に見せ付ける三枝はタイムリーな存在だけど。
元々犯罪ルポを書いていた作者の小説デビュー作。その後に発表された作品はなかなか面白い。

サイレント・ボーダー (文春文庫)

サイレント・ボーダー (文春文庫)