直線の死角

作者:山田宗樹|角川文庫
嫌われ松子の一生」の山田宗樹のデビュー作で、横溝正史賞受賞作。
弁護士の小早川の元に、ほぼ同時に2件の交通事故の弁護の依頼が舞い込んだ。
一つは交通事故で死亡した夫に対し、賠償金をどのくらい取れるのかという新妻の依頼。
もう一つは、顧問を務める企業ヤクザからの依頼で、謝罪の意志のない加害者の弁護だった。
小早川は報酬を得るためなら、悪どい手法も辞さない弁護士だが、どこかコミカルだ。
そんな小早川の下に、紀藤ひろ子という女性が助手として働き始める。
二つの交通事故のおかしな点を指摘したことで、ひろ子の聡明さに気づき、惹かれる。
だが、彼女は留学先のロンドンでエイズに感染していた。(ここが驚きの展開)
一方の依頼が保険金殺人の偽装であることを見破った二人は、逆に窮地に陥る。
悪ぶった中年の小早川が、純愛に傾くところが軽くていいし、交通事故の賠償金検出のケースも面白い。
デビュー作だが、すでに何作か書いているかのような安定した内容だった。
確かにその後の作品に比べると見劣りはする。でもこの作家を初めて読むのなら本作は悪くない。

直線の死角 (角川文庫)

直線の死角 (角川文庫)