赤道

作者:明野照葉光文社文庫
バンコクのアパートで全身を切り刻まれた瀕死の日本人の男が発見される。
彼はなぜ、異国の地でこのような凶事に出会うことになったのだろうか?
村瀬修二は、中堅商社に勤めていたが、バンコクに派遣され、会社を辞めてしまう。
妻とは離婚し、現地に残り、その日暮らしの生活を送っていた。
母親の死を聞き、帰国するが、日本には自分の居場所がなく、元妻の死を知りショックを受ける。
挙句のはてに、実家の登記証書を盗み出し、バンコクに戻るが、登記証書を盗まれてしまう。
転落し続ける修二は、バンコクの街を見つめながら、死ぬことばかりを考える。
一見、同情を受けそうな修二だが、他人の死に巻き込む人生を送っていた。
彼の冷酷さを綴るエピソードが、ありふれた転落ドラマに違った光を当て、面白くしている。
何とも不思議なサスペンス小説で、ホラーの要素もあり、非常に魅力的な小説だった。
この作家は「女神」も非常に面白かった。他の作品も読みたいのだが、本屋にはあまり置いていないのが残念。

赤道 (光文社文庫)

赤道 (光文社文庫)