美しい家

作者:加門七海光文社文庫
妖しげで幻想的なホラー短編集。7作品が収録されている。
都会の間で朽ち果てそうな家が見せる夢に取り込まれてしまう「美しい家」
孫を探して東京駅を歩いていると、空襲の過去が甦る「迷い子」
海辺に漂着したガラクタで芸術作品を作ろうとする学生に、地元住民が不気味に付きまとう「シーボーン」
別れた男から贈られた指輪が取れなくなってしまう「悪夢」
雨の日に路地裏に現れる女性に怯える男性の話を聞く「幻の女」
歩道橋の上に忽然と姿を現す老婆と老人と女子高生の交流を描いた「緋毛センの上」
流れ星をマッチにしてしまう不思議な男と少年の不思議な一夜「金ラベル」
怪談というより、幻想小説。時々、絶妙のフレーズが出てくるが、傑作とまではいかない。
補陀落をテーマにした「シーボーン」は相当恐ろしい怪談になりそうな気配だったが。
ただ、不思議な魅力のある作品が揃っていて、「緋毛センの上」と「金ラベル」は気に入った。
「怪談徒然草」を読む限り、面白いホラーが期待できそうなのだが。

美しい家 (光文社文庫)

美しい家 (光文社文庫)