千年樹

作者:荻原浩集英社
地方都市にひっそりと、そそり立つ巨大なクスノキを巡る短編集。
いずれの作品も過去と現代がリンクしながら、話は進む。
冒頭の作品は、平安時代に親子ともども殺害される国司と、イジメに堪えかねて自殺を図る中学生の話。
次の作品は、戦争中の空襲でクスノキの根本で死亡する子供と、タイムカプセルを生める幼稚園児の話。
客と駆け落ちし、死に向かう遊女と、遠距離恋愛をしている女性の話。
同僚の嫌がらせで切腹をする羽目になった武士と、イジメに悩む中学校教師の話。
連れ去った女性が死体になっても添い寝する山賊と、ヤクザが同級生を生き埋めにしようとする話。
赤ん坊を間引く貧しい小作人の妻と、連れ子通しの再婚で家族関係がしっくりいかない話。
祖母の死を看取る孫娘と、祖母の若かりし日の恋愛の話。
最終話は、冒頭で自殺を図ろうとした中学生が、役所勤めとなり、朽ちたクスノキを切る話。
萩原浩にしては、かなりダークで、幻想的な雰囲気が漂っている。
朱川湊人のようなストーリーもあるが、かなり後味の悪い話もある。
荻原浩の代表的な作品を好む人は違和感を覚えるだろう。でも自分は理不尽なところが気に入った。

千年樹

千年樹