影踏み

作者:横山秀夫祥伝社文庫
ノビ師という、深夜の民家に忍び込むことを専門にした泥棒が主人公。
真壁は出所してすぐに、逮捕のきっかけになった女性の行方を追う。
忍び込んだ家で目撃した、女性の夫への殺意。あれは本物だったのか?
真壁の中には双子の弟が存在していて、作品の中でも頻繁に会話を交わす。
弟は両親と一緒に焼け死んだ後から、真壁の中から語りかけるようになる。
まるで藤原伊織の「蚊トンボ白髭の冒険」を彷彿させる。
泥棒を生業としながら、様々な出来事に巻き込まれる真壁。
かつての婚約者が旅行の積立金を横領したとの疑いを晴らし、
盗人狩りをする暴力団に立ち向かい、泥棒仲間の娘にクリスマスプレゼントを届ける。
ヒューマニズム溢れる話だが、この作者特有の重苦しい雰囲気が漂っている。
誰にも認められない独りよがりの正義感と、地方都市特有の閉塞感。
でも、これが横山秀夫の描く小説の世界だと思う。
警察小説とは対極の泥棒を主人公にしているが、そこは変わらず、面白かった。
表紙の孤独な泥棒の姿がいい。

影踏み (祥伝社文庫)

影踏み (祥伝社文庫)