漂白の牙

作者:熊谷達也集英社文庫
宮城県北部の民家で、主婦が狼のような生き物に食い殺された。
周囲では絶滅したはずのニホンオオカミの目撃情報があった。
妻を無残に失った動物学者の城島は、単身山に乗り込み、オオカミを追う。
テレビ局のディレクターの恭子は城島を追うことで、スクープを得ようとする。
同じ頃、覚醒剤の売人が野犬に食い殺された状態で発見される。
刑事の堀越は、殺人事件と考え、被害者の周囲の捜査をはじめる。
その後、スキー場にオオカミが2頭乱入し、地元はパニックになる。
城島と堀越は2頭を殺害するが、野犬化したシェパードだと判定される。
城島はオオカミが存在していることを確信し、恭子とともに山中を調査し続ける。
堀越は被害者に共通点を見つけ、城島の近くに殺人者がいることを突き止める。
オオカミを生かし続けた山の民の存在と、迷宮入りした過去の強盗殺人事件。
同じマタギなのに、差別され続けてきた集落。
冒険山岳小説が、これらの重厚な要素が絡み、非常に面白い作品になっている。
邂逅の森」が非常に面白かったが、これもイイ。

漂泊の牙 (集英社文庫)

漂泊の牙 (集英社文庫)