烈火の月

作者:野沢尚小学館文庫
裏表紙に「笑いながら人を殴るのが特技という刑事が主人公」と書かれていたのに、無条件に惹かれた。
東京湾アクアラインが開通し、便利になった千葉県愛高市には、麻薬の売人たちも集まるようになった。
愛高署の刑事の我妻は、妻と離婚し、同僚からも煙たがられる存在だった。
冒頭で、ホームレス狩りの中学生を徹底的に痛めつける我妻が面白く、話に引き込まれた。
我妻の後輩の刑事が麻薬中毒者を捕まえようとして、金属バットで殴られ、植物人間になってしまう。
麻薬の売人は愛高市を毒していき、警察内部にまで協力者が潜んでいる状況となる。
そんな時、麻薬取締官の瑛子が我妻の前に現れ、内部の協力者を暴き出すことに成功する。
協力者は我妻が慕う先輩の岩城だった。岩城はその後、何者かに殺害されるが、自殺として処理された。
瑛子も拉致され、覚醒剤を打たれ、中毒患者となってしまう。
我妻は地元のデベロッパーを疑い、捜査を続けるが、行き過ぎた取調べで、署長からクビを告げられる。
仲間からも見捨てられた我妻は一人で黒幕を追い詰める。
あとがきに出てくるが、この小説はビートたけしの「その男、凶暴につき」のために書かれたシナリオがベースになっている。
薬物に関する薀蓄と、敵役のヤクザの阪神大震災での臨死体験などエピソードは飽きることはない。
映画とは別物の小説になっているが面白かった。ただ「笑いながら人を殴る」というギャグのようなシーンが無かったのは残念。

烈火の月 (小学館文庫)

烈火の月 (小学館文庫)