わらの人

作者:山本甲士|文藝春秋
初めて入った理容店。マッサージが上手くてうとうとしていると、とんでもない髪型に。
そんな人たちが髪型と共に、性格まで変わってしまい、様々な出来事に巻き込まれる短編集。
「眉の巻」は眉毛の形を変えられ、攻撃的な性格が芽生える女性の話。
「黒の巻」は記憶喪失の男が、虎刈りにされ、ブラックジャーナリストになる話。
「花の巻」は定年退職し、元気をなくした老人が、丸刈りにされ、町内の活性化に取り組む話。
「道の巻」は就職活動をする女性が、かつての友人達の変貌ぶりに失望し、金髪になり家業のうどん屋を継ぐ話。
「犬の巻」は会社研修の一環で、次期社長と目される男と登山をするが、遭難してしまう話。
「守の巻」は自宅に泥棒に入られた女性が、男性のような髪型にされ、護身術に目覚める話。
最初と最後の話が少し弱かったが、それ以外の話は非常に面白かった。
特に「花」と「犬」は面白かった。
弱い人が何かのきっかけで、スイッチが入り、性格まで変わってしまう。
何気ない日常で、誰もが遭遇するであろうトラブルをリアルに描いている。だから面白い。
たぶん、この作家はこれから売れるだろうな。

わらの人

わらの人