ぱちもん

作者:山本甲士|小学館文庫
先日読んだ「どろ」が異様に面白かった。
イメージとしては奥田英朗系の巻き込まれ型サスペンスにナニワ金融道の雰囲気をプラスという感じ。
で、この作者の作品を追っかけてみることにした。
本作は連作集でそれぞれ主人公が異なるが、3人の探偵を軸に話が進む。
探偵といっても、浮気調査や失踪人捜査などが中心で、調査はいい加減で、経費の水増し請求など胡散臭い。
挙句には調査対象を恐喝したり、依頼人を騙そうとするが、探偵達はどこかマヌケで、思い通りにならない。
「受けた恩義は」は愛人の浮気調査を請け負った探偵が、依頼人の脱税を知り、恐喝する話。
「夫が消えた」は、失踪した旦那の調査を探偵に依頼をした主婦が、隣人に疑いの眼を向け、探偵も疑う話。
「カネのにおい」は偶然目撃した喧嘩をネタに被害者・加害者両者から金をゆすろうとする話。
「この悔しさ」は訳ありの女性に横恋慕した市役所職員が、探偵に素性依頼をする話。
「もぐらがここにも」は製菓会社の社長から、社内のスパイを見つけて欲しいと依頼される話。
「しばくど、しまいに」は殴られることにより、示談金を騙し取り、かつての被害者に送金する話。
一見、美談のような話も、登場人物は歪んでいて、探偵はさらに捻じ曲がっている。
ハッピーエンドは一つもないが、「マヌケやなあ」という感想で、人情味も感じるので、後味は悪くない。
「どろ」ほどの悪意は感じられなかったが、とことん思い通りにならないストーリーは面白かった。

ぱちもん (小学館文庫)

ぱちもん (小学館文庫)