最後の一球

作者:島田荘司原書房
この小説は推理小説ではなく、野球を主題にした青春小説だ。
御手洗と石岡の元に、母が自殺未遂を計った理由を探して欲しいという美容師が訪れる。
母に会うと、「道徳ローン」という悪質業者の連帯保証人になったことが原因だった。
御手洗は「道徳ローン」に赴くが、捏造した書類は何者かに燃やされていた。
焼け跡からは、野球の硬式ボールが出てきた。
76ページからは竹谷というピッチャーの手記になり、最後まで続く。
竹谷はプロ野球の選手を目指し、甲子園に出場したが、ドラフトでは指名されなかった。
社会人に進んだが、選手層が厚く、エースにはなれず、2番手の存在。
だが、都市対抗の決勝で、武智という天才バッターと出会う。
その年のドラフトで、武智とともに横浜に入団する。
武智は1位、竹谷は契約金無しの14位。
入団後の二人は対照的な道を歩み、チームのクリンアップを打つ武智と、2軍で燻る竹谷。
結果を出せず、2年後にクビになった竹谷に、武智は自分専用の打撃投手になることを要請する。
竹谷は武智のために投げ続け、武智は横浜のスター選手に登りつめる。
だが、優勝のかかった試合の直後に、武智は野球賭博の疑いで逮捕される。
釈放された武智だが、球界から永久追放され、面会した竹谷は賭博の真相を告げられる。
その後、武智は猟銃を持ってどこかに乗り込もうとしているところを、竹谷の目前で再逮捕される。
武智の視線の先には「道徳ローン」の本社ビルがあった。
島田荘司には珍しいタイプの小説だが、竹谷の手記は読み応えがあった。
特に武智の転落の描写は上手く、野球を介した友情ドラマという雰囲気。

最後の一球

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