グロテスク(上・下)

作者:桐野夏生|文春文庫
名門のQ女子高校に在学した4人の女性を描く大河小説。
主人公の「私」は悪意の塊で、妹のユリコは類まれな美貌を持つが、天性の娼婦。
和恵は何事にも必死に取り組むが、見栄っ張りでイジメの対象になる。
学年一の秀才のミツルは何故か、嫌われ者の「私」とウマが合う。
小学校からの内部生の、高校からの外部生へのイジメが印象的に描かれる。
月日は流れ、4人とも中年に差し掛かる年齢になったころ、ユリコと和恵が殺害される。
ユリコは身を持ち崩し、容貌も崩れ、立ちんぼの街娼をしていた。
和恵は名門Q大学を出て、大手建設会社に勤めていたが、夜は娼婦をしていた。
何故、彼女達は殺害されたのか?悪意のある「私」の視点から描かれる。
「私」は壊れていて、記述もおかしいが、かえってそこが謎を深めている。
間にユリコの手記と二人を殺害した張の上申書が挿入される。
特に張の話は一編の小説を読んだような、内容の濃さだった。
また、東大の医学部に入ったミツルが新興宗教にのめり込み、逮捕される話もよかった。
だが、圧巻は娼婦となった和恵の日記だ。孤独な女性の魂の叫び。
「光り輝く、夜の私を見てくれ。」
救いようのない話だが、非常に面白く読んだ。作者の代表作になると思う。

グロテスク 上 (文春文庫)

グロテスク 上 (文春文庫)