真相

作者:横山秀夫双葉文庫
訳ありの人たちが主人公の短編集。作者の警察モノ以外の短編は珍しい。
「真相」は10年以上前に殺害された息子の犯人が捕まり、犯人が自供を始める。
だが、その自供の内容は息子の万引きを強請ろうとして、殺してしまったという。
息子の知らない顔を暴かれ、とまどう父親と、黙っていた家族。
「18番ホール」はかつての生まれ育った村で、村長に立候補する男の話。
彼は大学生のころ、故郷でひき逃げ事故を起こし、死体を埋めた過去があった。
村長に立候補したのは、開発で死体を掘り起こされるのを防ぐためだった。
最初は楽勝だと思えたが、対立候補に追い上げられ、選挙本部は険悪なムードになる。
「不眠」はリストラされたサラリーマンが、薬の治験のアルバイトで朦朧となる話。
眠れずに、かつての会社を訪れ、そこで目撃した不審な車。
その直後、ソープ嬢が殺害され、放火される事件が発生する。
男は不審な車のことを警察に告げるが、車の持ち主もリストラにあった同年代の男だった。
「花輪の海」は大学の空手部で同級生をしごきで亡くした男達の物語。
殺人的なシゴキの記述と傷を持った男達のその後がすごく印象に残った。
「他人の家」は強盗の前科を持つ夫婦が、親切な老人の養子になる話。
老人の死後、家を受け継いだが、かつての強盗の主犯が家に押しかけてくる。
5つの話は最後に「真相」がわかり、いずれも面白かった。

真相 (双葉文庫)

真相 (双葉文庫)