底なし沼

作者:新堂冬樹|新潮社
作者お得意の暗黒金融小説だ。やはりこのジャンルでは抜群に面白い。
借金の返済の終わった債務者の債権を漁り、二重取りを生業にする蔵王が主人公。
冒頭から、車椅子を蹴り倒し、首を吊った老人の銀歯を抜き取る鬼畜の所業が展開。
一方、他人の借金を背負い込まされ、会社を首になり、家族に逃げられた暗い過去を持つ日野。
現在は結婚相談所で成功し、会員から金をむしりとる羽振りの良い生活を送っていた。
キャバクラで出会った二人は、お互いを激しく憎むようになる。
蔵王は女を送り込み、日野を嵌めようとするが、返り討ちに遭う。
日野は自信を深めるが、蔵王の怒りに火を注いだだけだった。
やがてヤクザを巻き込み、暴力がエスカレートする。
手下を拷問にかけられると。蔵王は狂った仲間を仲間を集め、ヤクザの拉致を計画する。
蔵王の卑劣な手段と、ひたすら暴力にうったえるヤクザがどんどん登場してくる。
途中から日野はピエロに成り下がるが、暴力を目の当たりにした怯え方は真に迫っている。
でも、ヤクザの描き方は笑えるし、指を切り落とされる凄惨な描写でも、何となくコミカルだ。
恐怖感を煽るシーンが過剰すぎてギャグになっているが、作者もそれを確信犯的に書いている。
自分はそこが気に入っている。

底なし沼

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