赤々煉恋

作者:朱川湊人東京創元社
幻想的なホラーを描く、直木賞作家の短編集。これも面白かった。
「死体写真師」は妹を亡くした姉が、死に顔を撮影してくれる葬儀屋に依頼をする話。
ロシア人の写真師、良くない噂、変わってしまう恋人。この作家にしては、絶望的な結末。
「レイニー・エレーン」は渋谷で売春をして、殺されてしまった大手企業の女性がモチーフ。
ただし、この女性を知る男性の視点から描かれている。
「アタシの、いちばん、ほしいもの」は飛び降り自殺をした女子高生の霊の話。
霊になっても虚無的な女子高生だが、死にそうな人は見つけることができる。
心中の巻き添えになりそうな子供を救おうとするが、無力感に苛まれる。
「私はフランセス」はある女性のもとに届けられたMDに収録されているかつての同級生の独白。
自分の半生を語る内容は盗癖を悔いるものだったが、後半は一変する。
腕や足の無い女性に欲情する男と知り合った語り手が、変体し、最後に語る言葉は不気味だ。
「いつか、静かの海に」は青年と暮らす月星人と少年と3人の話。
美しい月星人の顔から下のグロテスクな描写と、飼育を引き継いだ少年の決断。
夜にしか見ることのできない夢。5編いずれも面白かったが、「私はフランセス」が良い。

赤々煉恋

赤々煉恋