水霊(ミズチ)

作者:田中啓文角川ホラー文庫
民俗学の教授の杜川は、宮崎でかつて新興宗教を主催していた家を訪れる。
娘の由美が引き起こすポルターガイストの真偽を見るためだった。
娘は折檻を受けているようだったが、杜川の前でポルターガイスト現象を起こす。
取材に非協力的だった母親はそのときの怪我で入院してしまう。
杜川はオカルト雑誌編集者の戸隠とともに、由美の家族の出身地を調査する。
そこは廃村で、アンバランスな様式の神社や遺跡、大量の人骨があった。
その近くにある泉を、村おこしのために名水として売り出そうとしている村長に出会う。
だが、村役場の人が異常な食欲を示した後に、痩せ衰えて死亡する事件が発生する。
杜川と戸隠は神社にまつわる謎を追い、水に原因があると考える。
主人公の杜川はロリコンで、婚約者のまゆみの嫉妬深さは尋常ではない。
冒頭の由美の母親の言動も異常だし、まゆみの弟の光一の杜川に対する忠誠も気持ち悪い。
他の人物もかなり壊れている。マトモな人間は戸隠しかでてこない。
登場人物にかなり癖があるのに加え、水を飲んで身体を支配されてしまう人の異常な発言。
ギャグのような台詞と、マンガのような描写。かなり文章は上手い。
特に、病気の原因を突き止めるスプラッタな描き方はいい。
ホラーの雰囲気は壊さずに、台詞にはギャグの要素があり、アメリカのB級オカルト映画のようだ。
これならスペクタクルな結末も受け入れることができる。
面白かった。この作家の他の作品も読んでみよう。

水霊(みずち) ミズチ (角川ホラー文庫)

水霊(みずち) ミズチ (角川ホラー文庫)