ピースサイン

作者:福澤徹三双葉社
創作怪談では、クオリティの高い作品を出し続ける作家のこの夏の新作。
現実と妄想の境がなくなり、異界に転落する人を描くのがこの作家の特徴だ。
ピースサインをして写真にうつると早死にするらしいという噂話の「ピースサイン
「哂う男」と「狂界」は借金を重ねながら、水商売の女に入れあげ、破滅する男を描いている。
賭け事に狂う若者達の仲間が意味もなく自殺する「夏の収束」
客足の遠のいた百貨店の、殺伐とした職場の人間関係を綴る「憑かれたひと」
「帰郷」は母の形見の仏壇と彼女と故郷に駆け落ちする男の話で、
「真実の鏡」はリストラに合った男が、再就職先でイジメに合う話。
登場人物が不利な状況に追い込まれる様はスリリングで、新堂冬樹の作品を彷彿させる。
だが、新堂冬樹の作品は第三者からの攻撃を受け、追い詰められるのに対し、
福澤徹三の作品は妄想で自滅する点が違う。この妄想の陥るまでの過程が非常に面白い。
ただ、過去の作品に比べると、インパクトは弱い。悪くないのだが、自分は少し残念。

ピースサイン

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