ランチブッフェ

作者:山田宗樹小学館
ホラーからギャグまで幅広い作風の6篇の作品が収められた短編集。
バツイチ男のもとに十年前の妻と自分からの手紙が届く「二通の手紙」
農薬会社の営業マンがクレーム先の百姓の家に赴く「混入」
表題作の「ランチブッフェ」は同級生とささやかで贅沢なランチをとる中年主婦の話。
田舎町でインターネットの株取引に燃える人たちを描いた「電脳蜃気楼」
妻の妊娠を喜んだ男だが、過去の記憶を思い出し、不安にかられる「やくそく」
「山の子」は生まれ故郷の神社で中年男性が、過去の自分に出会う話。
バラエティに富んでいるようで、読み終えると散漫な印象がぬぐえない。
たぶん、面白い話とつまらない話の落差が激しいからだろう。
山田宗樹らしい作風の「二通の手紙」と「ランチブッフェ」もいいが、
奥田英朗戸梶圭太のようなギャグを髣髴させる「電脳蜃気楼」が一番面白かった。
シリアス一辺倒と思っていたが、こんな話も描けるのだな。
いつまでも「嫌われ松子の一生」のイメージだけではもったいない作家だと思う。