ダーク(上・下)

作者:桐野夏生講談社文庫
村野ミロが悪役となる作品。これは今までのシリーズの中で一番面白かった。
冒頭、「40歳になると死ぬと決めていた」とミロの台詞。
かつての恋人が獄中で自殺したことを知らされなかったミロは、父親を殺しにいく。
首尾よく父親をしとめたが、父の関係者に追われる身になる。
父の情婦だった盲目の大柄なマッサージ師と、友人のヤクザ。
そして、かつてはミロの友人だった、ゲイバーの経営者。
博多で出会った韓国人の徐と愛人契約を結び、韓国に脱出したミロ。
だが、ミロと徐は次第に追い詰められ、徐は銃撃を浴び、車椅子生活になる。
二人は再び日本に戻り、復讐をしようとする。
ミロの絶望感と底意地の悪さ、盲目の久恵のしたたかさ、友部の卑屈さ。
登場人物には癖があり、暴力、薬、レイプ。
背徳的な雰囲気が非常に魅力的な作品。
特に、80年代初頭に徐が巻き込まれた光州事件の悲惨な描写が、彩りを添えている。