青空のルーレット

作者:辻内智貴光文社文庫
表題の作品と「多輝子ちゃん」という2編の中篇が収められている。
「青空のルーレット」はビルの窓拭きのバイトを描いた青春モノ。
バンド、演劇、漫画と将来の夢を追いながら、ビルの窓を拭く。
仲間の転落事故や、上司の汚い仕打ちに耐えながら、日々を過ごしていく。
ほとんどの仲間の夢は叶わないだろう。それでも彼らは窓を拭き続ける。
「多輝子ちゃん」は不思議な作品だった。
田舎に生まれた多輝子が、町の高校に通うようになり、初めて彼氏ができる。
だが、周りの目は冷ややかで、彼氏が事故で死亡、多輝子は自殺しようとする。
そこで流れてきた曲で自殺を思いとどまる。他愛もない話だけど、不思議な魅力があった。
大阪から東京に戻る新幹線の中で読み終えたが、軽くて悪くない作品だった。