ベースとギター2

前回1はここ
その後、ギターの男が結婚することになった。
当然、披露宴で自分達の演奏をすることが決まり、久々に気合を入れて練習。
だが、演奏することはなかった。式の直前に彼が交通事故で亡くなったからだ。
その日の深夜、電話がかかってきた。彼の母親からだった。
淡々とした口調で、先程彼が亡くなったことを告げ、友人に連絡してくれと頼まれた。
時計を見ると、2時過ぎだったが、友人達に電話を入れ続けた。
眠れないまま、彼の自宅にかけつけた。
布団に横たわった彼の姿を見ても、涙は出てこなかった。
その日も、告別式も、泣いている同級生の横で、呆然としているだけだった。
初七日が過ぎ、彼の両親から自宅に呼ばれた。
お礼を言われたが、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
だが、彼の部屋に案内され、ギターを見た途端、涙が止まらなくなった。
その後、バンド活動は止めた。楽器を持つとつらくなるからだ。
楽器は処分できず、物置に放り込んで、見ないようにした。
ボーカルはその後、他のメンバーとバンドを組み、社会人バンドのコンテストで優勝。
CDも出すようになったが、自分とは疎遠になった。
何年か経ち、久々に楽器をさわってみようという気になって、
ベースを弾こうとしたら、手が動かなくなっていた。ギターもそう。
フレーズどころか弾き方さえ、すっかり忘れていた。
でも、処分はできず、東京にも持ってきた。
昨日、クローゼットを覗くと、ベースとギターが転がったままだった。
で、今までのことを思い出した。
10年以上経つと、いくら親友だったといっても忘れてしまうものらしい。
時は残酷で、情け無い。