包帯クラブ

作者:天童荒太|ちくまプリマー文庫
傷ついた少年少女たちが、辛い思い出の場所に包帯を巻いていく物語。
中学時代に「方言クラブ」を作っていたワラは、面白くない高校生活を送っていた。
学校を抜け出し、病院の屋上にいると、ディノという少年に出会い、
傷ついたと感じた場所にあるモノに、包帯を巻くと癒されると感じたワラ。
彼女は親友や、悩んでいる知り合いを巻き込み、「包帯クラブ」を結成する。
彼氏に振られたり、ホモの教師に被害を受けたり、両親の離婚や悩みは色々。
ホームページを開設した彼らは、メールで悩みを受け付け、様々な場所に包帯を巻きに行く。
小学校の百葉箱、飼育小屋、鉄棒、中学校の校門、サッカーゴール、体育倉庫。
図書館、児童館、神社の鳥居、駅前のバス停。
「包帯を巻いて、心が軽くなるのは、傷が治ったわけじゃなく、<私はここで傷を受けたんだ>と自覚することができ、自分以外の人からも、<それは傷だよ>って認めてもらえたことで、ほっとするんじゃないかと思った。」
だが、彼らの活動を妬んだ人からのタレこみで、クラブは解散の危機に瀕する。
包帯は剥ぎ取られ、仲間達と感じた高揚感、信頼感、存在さえも希薄になっていく。
久々の新作だが、この作家は相変わらず、傷を持った人をテーマに描いている。
「私はこれだけ傷ついています」というのは、この作家のデフォルトで、もはや過剰だ。
でも、文章や表現は上手く、内容も面白い。寡作だから読めるのだろうな。

包帯クラブ The Bandage Club (ちくまプリマー新書)

包帯クラブ The Bandage Club (ちくまプリマー新書)