キタイ

作者:吉来駿作|幻冬舎
第6回ホラーサスペンス大賞受賞作。これは不気味で、面白かった。
過去に友人の葛西を死なせてしまい、彼を生き返らせる儀式を行った同級生たち。
18年経った現在、儀式に参加した8名は皆、精神を病み、亡霊に怯える日々を送っていた。
香港に逃げていた深町は、かつて惚れていたハルからの電話で、日本に戻ることにした。
ここまでが第1章で、第2章は葛西が死ぬまでにいたった話と、
「キタイ」と呼ばれる儀式に関する話。この部分は少し長すぎた感じがする。
第3章は、甦った葛西と精神を病んだ同級生達との対決の話。
死者の記憶を食べる寄生虫の存在や、同級生の悲惨な境遇が抜群に面白い。
トカゲや虐待されたネズミの記憶を植えつけられた同級生の変貌は気持ち悪い。
「死ぬとどうなるんだ?」「思い出がなくなれば消えてしまうだろう。」
死者の記憶を閉じ込めた、青く光る球の表現が不気味。
デビュー作で、少し稚拙な構成と、わかりにくい文章が残念だ。
じめじめと恐怖感を煽ったかとおもうと、カラッとした記述。
マイナス要素が目に付くのに、怖い。話として面白い、不思議な作家の登場だ。

キタイ

キタイ