わくらば日記

作者:朱川湊人角川書店
話は面白く、共感させられる表現や、物悲しい文章が印象的。
この作品は昭和30年代の東京の下町を舞台にした姉妹の物語で短編集。
妹の視点で描かれるが、主役は人の記憶を覗くことのできる病弱な姉だ。
ひき逃げ事件の犯人を言い当てたり、女子高生を殺した殺人者に対面したり、
親友と思っていた女性が泥棒だったり、手品が得意な大学生に死の影を見たり、
苦手な老婆を殺人の冤罪から救ったり、姉は活躍する。
当時の事件をベースにしているところも面白い。
姉は27歳で亡くなったと最初から語られているが、本作ではその理由は語られない。
父親と離れて暮らしている理由も分からずで、続編はぜひ読みたい。
直木賞をとったあとの作品もハズレはない。誰かに勧めたくなる作家だ。