東京タワー

作者:リリー・フランキー|扶桑社
作者の自伝的小説。筑豊で生まれ、父と別居した状態で過ごした幼少時代。
野球部に入り、先輩から理不尽なシゴキを受ける中学時代。
美術系の高校に進学し、別府で気ままな下宿生活。
上京し、武蔵野美術大で自由な生活を送り、就職もしないまま彷徨う日々。
そんな主人公を、貧しい生活を送りながらもオカンは支え続ける。
その後、ようやく生活の基盤ができ、母親を東京に呼び寄せる。
二人の家には、色んな人が出入りし、賑やかになる。
だが、母親はスキルス性の癌に侵され、余命は幾許もないことが分かる。
愛する人を失う恐怖感を描くくだりは、読んでいるほうもつらくなる。
母が亡くなったあと、息子に宛てられた遺言を読むシーンは泣ける。
「オカンとボクと、時々、オトン」と副題にあるように、自伝でありながら、
貧しいながらも明るさを失わず、息子を精一杯育てたオカンが主人公。
母親の死を扱うのは反則のような気もするが、笑えて、面白かった。