泥の蝶

作者:津本陽幻冬舎文庫
太平洋戦争のインパール作戦を中心としたビルマの戦闘を描いた作品。
歴史小説で大家となった作者が、作家となる前に、先輩から聞いた話で構成されている。
アキャブや、インパール、フーコンと戦場の話が別々に描かれる。
ストーリーに一貫性はないが、補給がないことに苦しめられたことは司令部に怒りを覚える。
牟田口を始め、高級幹部がクズだったのは、一般的に知られている。
この作品は、兵士の目線で描かれており、カオスな状況が伝わってくる。
そんななかで、フーコンで戦う菊兵団(第18師団)の下士官のエピソードは興味深かった。
彼らは、負け戦の中でも夜襲を頻繁に行い、戦意は旺盛で、栄養状態も悪くなかった。
補給はなかったのではなく、十分に行きわたっていないのではないかと思わせる。
生き残った人たちの貴重な証言集だが、そんなに面白くない。
でも、太平洋戦争を知らない人には、読む価値はあると思う。



泥の蝶―インパール戦線死の断章

泥の蝶―インパール戦線死の断章