ラブレス

作者:桜木紫乃新潮文庫
戦後間もない北海道。電気も通らない集落に、里子に出ていた里実がやってくる。
迎えた長女の百合江は、バスガイドを夢見て、中学に通っていた。
農業を営む一家だが、父親はアル中で、百合江にも、里実にも明るい将来は見えなかった。
中学卒業と同時に百合江は薬局に奉公に出され、そこの主人に処女を奪われる。
歌うことが好きだった百合江は、旅芸人の一座についていくことにし、北海道を脱出。
旅芸人の一座と、各地を回った日々は座長の死と共に終焉を迎える。
一座のギター奏者との間に子供を設けた百合江は、北海道に戻ってくる。
妹の里実は散髪屋で働き、店を任されるようになっていた。
百合江は里実の援助を受けるが、ギター奏者が失踪。
新たな嫁ぎ先に赴くが、姑との折り合いが悪く、子供も奪われてしまう。
流転する百合江と、経営者として成功を収めていく里実。
対照的な人生を送り、百合江は孤独死で見つかる。


これは読みごたえがあった。
この作品後、ブレイクする作者だが、これは掛け値なしに面白い。
流転する百合江の生涯は、梁石日の「血と骨」の女性版のようだ。
また、里実の成功と挫折も合わせて、重厚な大河ドラマとなっている。
にもかかわらず、文庫本で400ページというコンパクトな内容にまとめた作者の力量はすごい。


ラブレス (新潮文庫)

ラブレス (新潮文庫)