陸軍人事

作者:藤井非三四|光人社NF文庫
軍整備が形を成し、敗戦までの60年間、日本の軍部はいびつな人事で進んだ。
海軍は薩摩、陸軍は長州という風潮があったが、日露戦争後、陸軍は解消に向かう。
ところが大佐級の連中が、上の人事を動かそうと、「一夕会」を結成する。
そこには東条英機もメンバーに連ねていた。
いびつというのは、軍大学校の成績がすべてで、その後の経歴はあまり関係のないところ。


卑怯の代名詞となっている富永恭次が開戦前に、人事の中枢にいたのは驚きだ。
また、牟田口廉也が東条のラインで一時人事にも噛んでいたのもびっくり。
もっと興味深いのは、報復人事で死地に追いやられた将軍のエピソード。
硫黄島栗林忠道は、開戦時の香港攻略軍の参謀長だったが、作戦の中で皇族の怒りを買った。
沖縄の牛島満は、皇居近くの火事で、傍観していたことがひんしゅくを買った。


人事の失敗を徹底的に追及していて、面白い内容だった。
人事は権力者が思うままに行使できるところは、現在の会社組織でも変わらない。
人事って何だろうね。