この国。

作者:石持浅海光文社文庫
文庫本裏書
一党独裁の管理国家である「この国」は非戦平和を掲げることで経済成長を遂げた。
死刑執行は娯楽となり、国民は小学校卒業時に将来が決められ、士官学校は公務員養成所と化し、政府が売春宿を管理する。
そんな国の治安警察官・番匠と、反政府組織の希代の戦略家・松浦。
ともに「この国のために」知略の限りを尽くす二人の、裏の裏を読み合う頭脳戦を活写した傑作!


5つの作品が収録された連作集。
「ハンギング・ゲーム」は公開処刑の妨害に備え、番匠が松浦と知力を競う話で、一番印象的だった。
「ドロッピング・ゲーム」はエリートの進路に進めなかった小学生が転落死する話。
ディフェンディング・ゲーム」は連続する強盗未遂事件に海軍士官学校の学生が夜回りに出かける話。
「エミグレイティング・ゲーム」はある売春婦の客が、連続して殺害される話。
「エクスプレッシング・ゲーム」は政府主催のイベントで、番匠と松浦の最終対決を描いている。
それぞれのタイトルに「ゲーム」とついているように、謎解きと二人の対決が主題となっている。
国家間に対して、正義を熱く語るわけでもなく、非常に乾いた印象を持ったが、そこが魅力的でもある。
独特の雰囲気も良く、面白かった。

この国。 (光文社文庫)

この国。 (光文社文庫)