堂島物語1〜6

作者:富樫倫太郎|中公文庫
18世紀の大坂の米問屋を舞台にした経済小説
文庫本で6巻と長編で、2部構成となっている。
前半の主人公は16歳と遅い時期に丁稚になった吉佐。
もともと農家の長男で、寺子屋で学び、教養の下地はあった。
加えて、米の先物取引に興味を持ち、気付いたことを記録する習慣を身に着けた。
米の先物取引は指定業者しかできなかったが、庶民は「つめかえし」という場に投機していた。
吉佐は、この「つめかえし」で投機の勘を磨き、先輩丁稚の窮地を救う。
傾きかけた奉公先は、商売勘のいい吉佐を跡取りにしようとする。
ところが、吉佐は心に決めた女性がおり、奉公先を出ていく。
その後、金持ちの客から資産運用を任され、先物取引の腕を上げていく。
飢饉を察知し、大相場に臨むが、心を削られていく吉佐の心境の描写が前半のクライマックス。



第2部は、吉佐の先輩丁稚の遺児である百助が主人公になる。
「つめかえし」で借金を背負った父は勤め先を出奔し、酒浸りの自堕落な生活を送る。
百助は、家族を顧みない父が酔って転落した現場にいながら、見殺しにする。
家族を支えるため、野菜の行商に身をやつすが、百助は工夫をして、顧客を増やしていく。
家族を養えるようになった百助だが、父が破滅した「つめかえし」の魅力にあらがえなくなる。
百助も、吉佐と同様、丁稚としては少し遅い年齢から、米問屋に身を置く。
そのころ、吉佐は「能登屋」という屋号を持ち、相場師としては伝説となっていた。
百助は父の無念を晴らすため、少しでも吉佐に近づくため、米相場の研究をする。



これは面白かった。6巻で終了したが、もっと続けてほしいと思わせる内容だった。
吉佐ののし上がり方も、百助の成長も、彼らにつらくあたる人物の存在のおかげでスリルがあった。
米の先物取引というテーマも、現代の金融商品につながり、飽きさせない。
誰が読んで損することのない傑作だ。


堂島物語(1) 曙光篇 (中公文庫)

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