懐かしい家

作者:小池真理子角川ホラー文庫
8つの短編が収録されたホラー小説。
「ミミ」は老婦人に連れられ、夜にピアノ教室にやってくる少女と、先生の話。
「神かくし」は、自分の気に入らない人を行方不明にすることができる女性の話。
「首」はオカルトにかぶれた兄の死後に、兄の幻を見る妹の話。
「蛇口」は存在しないはずの場所に蛇口が現れ、その後、誰かが死ぬ話で、これは面白かった。
「車影」は禍々しい雰囲気のタクシーに乗った人が、行方不明になる話で、これも神隠しがテーマ。
「康平の背中」は料亭で初老の男性と向き合いつつ、過去の不倫を振りかえる女性の話。
「くちづけ」は過去、それも中世を幻視する女性の話で、3ページほどの短編。
「懐かしい家」は、夫婦関係にひびが入った女性が、誰もいない実家で生活を始める話。


以前に発表された作品に、書き下ろしの「懐かしい家」を加えている。
ちょっと古臭さを感じるところもあるが、背後に忍び寄る恐怖感の描き方は上手い。