戦国鬼譚 惨

作者:伊東潤講談社文庫
武田信玄死後から滅亡までの家臣団の動きを描いた短編集。
「木曽谷の証人」は材木の既得権を持つ木曽家の当主と弟の確執で、読み応えがあった。
「要らぬ駒」は武田家と命運を共にしようとする下條家当主と、生き残りを探る家臣との駆け引き。
「画竜点睛」は信玄の弟の信廉の優柔不断な性格を、帰還しようとする父の信虎を絡めて、効果的に描いている。
「温もりいまだ冷めやらず」は高遠城で敢闘した仁科信盛の話で、ホモっぽいエピソード。
「表裏者」は穴山梅雪の躓きというか思いあがりを描いた作品。
5つの話に共通しているのは後味の悪さで、「木曽谷の証人」は面白かった。
その後の作品も悪くないが、南條範夫の劣化版のような印象を持った。
この手の話には、もっと残酷な結末が望まれる。



戦国鬼譚 惨 (講談社文庫)

戦国鬼譚 惨 (講談社文庫)