オープン・セサミ

作者:久保寺健彦|文春文庫
様々な世代の日常を描いた短編集。
「先生一年生」は児童をコントロールできない20代の新米男性小学校教師の話。
同僚や、サバサバした女教師となりゆきで肉体関係になるが、自分なりの解決策を見出す。
「はじめてのおでかけ」は在宅勤務をする30代主夫の話。
娘が一人でお出かけをすることが不安で、娘との約束を破り、後をつける。
「ラストラ40」は40歳になったシングルマザーが息子の運動会のリレーに参加させられる話。
「彼氏彼氏の事情」は、不倫が原因で飛ばされた有能な同年代の部下との交流を描いている。
50代の男性が、互いの趣味で意気投合するが、ちょっとホモっぽい。
「ある日、森の中」は夫の定年で、自分の趣味を見つけるためにハイキングサークル加わった60代女性。
近郊のハイキングに参加したが、ほぼ遭難の状況に巻き込まれ、さらに野生の熊に遭遇する。
「さよならは一度だけ」は元ヤクザと思われる70代の老人と孫のような子供との短期間の共同生活の話。



それぞれ、ひねりがあり面白かった。
自分はこの作家の描く、主人公がどうしようもなく刹那的な衝動で起こす行動や、
その結果、そこはかとなく漂う物悲しさが好きだった。
「先生一年生」と「さよならは一度だけ」はそんな作品の流れをくんでいる。
他の作品は、新しい境地を拓いたと思う。短編集は初めてだが、今後も期待したい。



オープン・セサミ (文春文庫)

オープン・セサミ (文春文庫)