汝、隣人を愛せよ

作者:福澤徹三徳間書店
大学講師の真壁は、助教授昇進を当て込み、中古のマンションを買った。
入居直後から、「静かにしてください」という無記名の当初をポストに入れられる。
真壁は大学生になった息子が下宿しており、妻と二人暮らしで、非難を受ける心当たりがない。
だが、下のフロアに化け物のような中年女性が住んでいた。
ゴミの出し方でトラブルになった真壁は、この中年の女性と激しい口論となった。
直後から、ハトの死骸や、魚のあら、玄関の落書きが始まる。
そんなトラブル続きのなか、真壁は、助教授のポストどころか、リストラに会い、失業してしまう。
妻との関係は冷え込み、失業がばれた途端、妻は実家に帰っていく。
ハローワークに通う真壁は隣人の若妻と親しくなる。
また、階下に住むジャーナリストから、このマンションに以前自殺があったことを知らされる。
真壁は気づかなかったが、出ていった妻が、夜に屋上を歩く足音を聞き、こわがっていた。
屋上は施錠され、誰も入れないはずだった。一人になった真壁も足音を聞くようになる。


自殺した女の亡霊と悪意に満ちた住民。
サスペンスとオカルトが入り混じり、巻き込まれ型のストーリーとしては非常に面白い。
普通は主人公に肩入れするものだが、この作家は、主人公にも距離を置いた醒めた視点で描くのがいい。
それにより、被害妄想の境界線があやふやになり、読み手の不安感をあおり、結果として面白い内容となっている。
そろそろ怪談以外でも注目されても良い作家だと思う。


汝、隣人を愛せよ

汝、隣人を愛せよ