日本の路地を旅する

作者:上原善広|文春文庫
大阪の被差別部落に生まれた作者が、日本各地の部落を訪ね歩くルポ。
雑誌の実話ナックルズでこの手の話を書いていたのは知っていた。
作者自身は同和問題に関して、過剰な保護には懐疑的な立場にある。
ただ、もう解消していいだろうという思いと、おもむきだけは残しておきたいという心情が交差する。
また、作家の中上健二の言葉を借り、部落という言葉を使わず、路地という表現でまとめている。
冒頭、作者の生まれた大阪の路地の描写を少年時代にさかのぼり、描いている。
その後、日本各地にある路地をルポする。
部落問題がほぼ解消されたと思われる東北や北海道でその痕跡を訪ね歩く。
江戸時代から藩を越えたネットワークがあったことを、東京の皮革工場で知る話は興味深い。
長野や大分には温泉地に路地があり、山口では幕末に被差別民による倒幕隊があった。
佐渡対馬や沖縄の路地は、西日本と異なり、もうそっとしておいてくれというスタンスだった。
全部は知らないけど、中国・四国・北陸も明らかにまだ差別されている地区はある。
この作品を読むと、関西の同和地区は被害者意識が強く、解消はまだ先だと思わされる。
行政の中で威張り腐っていた同和地区に対して、良い印象はだれも持っていない。


非常に面白い内容だった。大阪の同和地区も変わってほしいもんだ。



日本の路地を旅する (文春文庫)

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