ラストダンス

作者:堂場舜一|実業之日本社
プロ野球チームのスターズに所属する樋口と真田は共に40歳になっていた。
真田はドラフト5位で指名されたが、その後、投手のタイトルを何度も獲得する。
樋口はドラフト2位で指名されたが、正捕手になることはなかった。
二人は新人のころ、一度バッテリーを組み、苦い思い出があった。
チームの状態が悪い時期に、樋口は2軍監督の打診と、現役引退を告げられる。
一方、真田は自分の調子がピークの時に、引退を発表する。
人気選手の真田の引退発表と共に、観客動員数は増え、チームは優勝争いに加わる。
だが、正捕手が故障し、2番手捕手も怪我をして、樋口は久々に一軍に上がる。
真田とはバッテリーを組むことはなかったが、他のピッチャーをリードし、勝利を重ねていく。


勝てば優勝が決まるという最終戦で、真田は先発し、樋口とバッテリーを組む。
17年ぶりのバッテリーで、事前には引退をめぐって揉めていた。
真田は完全試合を目論んでいて、樋口に真意を告げる。
あっけにとられた樋口だが、真田の投球を最大限に引き出す配球を要求する。



スポーツノベルと言えば、青臭い青春が背景になるのが定番だが、この作品は少し違う。
引退間際に追いやられた対照的な立場の二人をリアルに冷めた感じで描いている。
だが、クライマックスは青春モノの盛り上がりで、ギャップが面白い。
絶対に相性が合わないと言われた二人のエピローグもいい感じだ。