杖下に死す

作者:北方謙三|文春文庫
大塩平八郎の乱を描いた歴史小説
江戸の隠密としてやってきた光武利之と、大塩平八郎の養子の格之介との交流が主題となっている。
剣客でもある利之は、父の命で大阪にやってきて、父の知り合いの西町奉行の元に居候する。
そこで、東町奉行の与力の格之介と出会う。
父の平八郎の言いなりのまま、陳情に駆け回る格之介にもどかしさを覚える利之。
利之は格之介に接近し、剣術の師匠となる。
剣術の腕は平凡だが、並みならぬ覚悟を持っている格之介に対して段々と友情を覚えるようになる。
隠密としての利之は、大塩平八郎が幕府に対して反乱を起こそうとしていることに気づいている。
格之介を通じて、思い止まらせようとするが、隠密としての本能もあり、事態を見守る。


大塩平八郎の描かれ方が客観的で、幕末の世相不安なところを作者の推理が挿入される。
大塩平八郎は何故反乱を起こしたのか?
これに対する答えはあるが、この作品の主題はあくまで、利之と格之介の友情だ。
台詞のやり取りは完全に北方謙三の世界だ。大塩親子の爆死のシーンはない。



杖下に死す (文春文庫)

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