梟の拳

作者:加納諒一|徳間文庫
元ボクシング世界王者の桐山は、防衛戦の戦いで失明し、現役を引退した。
その後は、芸能番組に出て糊口をしのいでいた。
チャリティ番組の収録で、原発推進団体の幹部に呼ばれ、部屋を訪れるが、死亡していた。
さらに現役時代を支えてくれたマネジャーの永井も轢き逃げ事故で死亡する。
目の見えない桐山の前に、怪しげな人物が現れ、脅迫していく。
桐山はジャーナリストの妻と、永井の妹と共に、巻き込まれた謎を解決しようとする。
その先に横たわっていたのは、原発利権の闇だった。



この作品は阪神大震災の年に発行されているが、その後、文庫本でも復刊は無かった。
この作家の初期の作品で、いつか読みたいと思っていた。
盲目の主人公が語り部なので、もどかしい部分があるが、話は面白い。
原発の危うさの着眼点をこの時代に持っていたのは驚きでしかない。
その後の作品を先に読んでいるから、ちょっと評価は低くなる。
これといった賞もないし、ベストセラー作家ではないが、ハズレの少ないストーリーテラーだ。



梟の拳 【徳間文庫】

梟の拳 【徳間文庫】