震える牛

作者:相場英雄|小学館
帯に平成版「砂の器」と書かれていたが、これは読んでいない人にはアピールしないだろう。
でも、ストーリーは抜群に面白かった。
都内の居酒屋で、強盗殺人事件が発生し、客が殺害された。
その手口から、外国人の強盗グループの犯行と思われた。
その後、事件は解決に至らず、未解決班の田川に回されてくる。
田川は、強盗に殺害された客二人に注目するが、接点が見つからない。
一方、郊外型の巨大ショッピングセンターを展開するオックスマートはスクラップ&ビルドを繰り返していた。
地方都市の惨状を引き起こす巨大店の出店に疑問を感じる女性ジャーナリストの鶴田は独自に調査を始める。
田川と鶴田の調査のストーリーがシンクロし、一気に読める作品だ。
消費者を欺く加工食料品、これはミートホープを下敷きにしているのだろう。
地方の商店街を潰し、大型SCを展開するのはイオンをモデルにしているな。
地方の国道でユニクロ、イオン、マクドナルド、吉野家などの全国展開している店の弊害が描かれている。
日本の現状を問題提起する経済小説の側面もある作品だが、内容はミステリだ。
タイトルは狂牛病を指すのだが、経済問題と犯罪が結び付く構成は上手く、切り口の上手さに感心した。
読み終えると、激安居酒屋で食べたり、コンビニで弁当を買うことが躊躇われる内容になっている。
これは問題提起だな。

震える牛

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