草莽枯れ行く

作者：北方謙三｜集英社文庫
赤報隊の隊長相楽総三と、清水の侠客清水次郎長を描いた幕末時代小説。
相楽は尊王攘夷の志に燃え、関東で同士を募るが、天狗党の乱で挫折を味わう。
賭場で次郎長と出会い、互いに共感するものを感じ取る。
二人は江戸の火消しの新門辰五郎や山岡鉄舟、勝海舟と交流し、幕末の要人と関わりを持つ。
坂本龍馬、西郷隆盛、大久保利通、土方歳三、沖田総司など幕末メンバーのフルキャストだ。
江戸と京を行き来する総三と次郎長は次第に親交を深め、商家出身の総三が、港の生業を提案する。
次郎長は清水の港の利権を獲得し、ヤクザとしてのし上がっていく。
総三は青臭い理想に駆られたまま、西郷や公家の岩倉具視に取り込まれ、赤報隊を結集し、統幕の先鋒となる。
年貢の減免などを掲げ、中山道を進んだ赤報隊だが、幕末の混乱の中、偽官軍の汚名を着せられる。
総三は、申し開きに行くが、有無を言わせずに斬首された。
維新の大物に翻弄された青年の悲劇を描いた作品。

北方謙三の作品は台詞のテンプレートがある。
この言い回しはどこかで読んだなと気づく。
でも、それでもぐっと来るものがある。総三と次郎長の活躍は読みごたえは十分。
この作家の戦闘シーンは少人数の方が情景が浮かびやすい。
その点では、非常に分かりやすい作品。
面白かった。

草莽枯れ行く (集英社文庫)