八月十五日の夜会

作者:蓮見圭一|新潮文庫
太平洋戦争で激戦となった沖縄を舞台にした作品。
本島ではなく、戦闘のほぼ起きなかった離島を舞台にした異色の内容。
赤旗新聞の販売所を営む祖父が死亡した。沖縄で終戦を迎えた祖父は戦時のことは話さなかった。
孫の秀二は、通夜に訪れた祖父の戦友と知り合い、祖父の遺骨を沖縄の海に散骨する。
その後、祖父の戦友から紹介された家を訪れ、古びたカセットテープを託される。
ある人物が語る戦争の体験談だが、戦争とはかけ離れた悲惨な出来事が綴られる。
国を守るための大義名分はなく、疑心に駆られる兵隊と、疑われる島民。
米兵が気軽に入りこんできたことから、兵隊たちによる島民への虐待が始まる。
すでに終戦を迎えていたが、本島から孤立した島ではさらに深刻な事態が進む。
島に売られてきた子供を殺し、逃げる島民を追い詰める日本兵
あまりにも救いのない話だが、テープから語られる内容にはリアリティに満ちている。
戦争はこういう事態も引き起こすのだと想像力を駆られる内容だった。


八月十五日の夜会 (新潮文庫)

八月十五日の夜会 (新潮文庫)