逢はなくもあやし

作者:坂東眞砂子集英社文庫
バックパッカーの恋人が行方不明になり、OLの香乃は、彼の故郷の奈良の畝傍を訪れる。
彼の母親から、実家で死亡したと告げられるが、死因も教えてくれず、香乃は信じられない。
時が止まったような静かな彼の故郷で、香乃は考古学者と出会い、この地に眠る持統天皇の話を聞く。
また、この考古学者は戦時中に親戚の悲恋の話をし、直後から香乃は白昼から神社に佇む男の気配を感じる。
畝傍の町に惹かれるようになった香乃は、彼の49日に訪れ、彼の死の真相を知らされる。
人を死んでも待つということを幻想的な雰囲気で綴った伝奇小説。
人の気持ちの移ろいやすさも現実的な描写で、この作家の持ち味がでた佳作。
200ページに足りない文庫本なので、1時間ほどで読める。


逢はなくもあやし (集英社文庫)

逢はなくもあやし (集英社文庫)